山崎の観光スポットで最も知られていない名所である。昭和3年に作られた環境共生住宅の原点といわれる建物。聴竹居。その価値を考えれば、一般の知られなさが意外に思えるほどの名所。日本の近代建築20選の建物であり、藤井厚ニという大正から昭和にかけて活躍した建築家のものである。

 

聴竹居があまり一般に知られていない理由は、建物規模の面で小さいことや、メディアの露出の低さにあるとは思う。文化財に登録もされていない上(目指しているそうです)に、地元のどの案内版にも出ておらず、小学4年生以下は入館禁止。さらに、18歳未満の学生・児童は先生もしくは保護者の付き添いが必要で、中の写真撮影も禁止されていて、山崎の秘境とでも言える場所だ。

追記※2017年6月:ついに国の重要文化財に登録されました。
 

聴竹居の見学

露出の低さはもちろん建物の保存の観点からきているのだろうが、全く見学できないわけでもなく、事前にサイトでメールで申し込めば、ボランティアさんの案内で居内に入ることができる。ちなみに室内の写真撮影自体はOKだが、インターネットなどに公開はできない。そういうわけでこのページも、外の様子の写真だけです。興奮したので、50枚ぐらい撮りましたが・・。
 

聴竹居を訪問

「聴竹居」は夏の暑さや湿気対策に最も力を注いでいた建物ということらしいので、それなら夏に行くべきだなと、真夏に訪問することにしました。山崎は、北は天王山に囲まれ、南は三川合流の地であり、夏は湿気は高いし、半端じゃなく暑いところです。毎年きっちり8月には、湿気むんむんで35度超えてきます。そんな暑さの中、JR山崎駅から、ふらふらと山の方へ歩き踏み切りをわたって、天王山山道入り口の横の、赤いポストの道に入って、木が生い茂る入り組んだ道を登っていくと、小さくかわいらしい木の看板に出くわします。
 

 
予約時間より早くついたので、周りをうろうろしていると、竹で作られた長いすが道路横にあるのを発見。腰掛けて待っていると「聴竹居見学の方どうぞー」と呼ぶ声が上の方から、それまで、セミと小川の音しか聞こえていなかった場所に人の声。ふいを討たれた驚きと共に、招かれた客という気分になります。
 
ゆるやかにカーブしている石の階段を登ると、見晴らしの良い庭が見える聴竹居の玄関に到着する。声をかけてくれたボランティアさんが笑顔で、中で待っているようにと言われる。ぞうりを脱いでスリッパを履いて入る。あと5人ほど来るらしいとのことで安心する。人数が多いと疲れるし、少ないと緊張する達なので、6人ぐらいってのは理想的です。
 

いきなり涼しい聴竹居内

で、最初に居内に入って出くわすのが、中心である居室、いわゆるリビング。床には板が敷かれていてフローリングになっていて、モダンな感じがします。正面に一段あがって畳の間があり。そこに座ってくださいとのことで、そこでじっと待っていた。
 
入って数分して最初に気がついたことは、いつの間にか汗がひいていたこと。室内を涼しい風がそよいでいる感じがしたのでエアコンでも入っているのかと思って、きょろきょろ見回したが、扇風機1台だけ。外が殺人的な日光だったから、この差に驚く。後で散々説明をうけることになるが、工夫によって外との気温差が約4℃はあるという。
 

ボランティアさんに説明をお願いしよう

やがて、道に迷った若い女性2名と年配の2名の4名様と、関東から勉強に来たという工務店の方1名を加えて、見学は開始となった。ボランティアの方に最初に、どういう見学をされますか?と聞かれたので、説明付きで詳しくやって欲しいですとお願いすると、それではと、咳き込んでから、聴竹居のそのそもの説明から初めてもらえる。説明なしで、自由に見学してもいいそうですが、この説明が半端なく面白いので、行ったら、絶対に説明してもらうことをおすすめします。
 
そうして、今日はね、咽喉の調子が悪いんですよと言いながらも、いきなり熱弁開始である。まず聴竹居の建てられた背景から。「聴竹居」は日本最初の環境住宅であり、当時、西洋の影響を受けた建築物が乱立して、日本の建物の良さを忘れてしまっていることに危惧を抱いた建築家藤井厚二が、日本に相応しい和洋折衷の建物の建築を目指したのがはじまりです、と。
 
さらに、藤井厚二は、この辺一体の山林約1万2千坪を買い占めて(上手にプール、茶室下には滝をつくっていたとのこと)次々に建築の実験をしていたこと。実家は広島県の豪商であり、妻は東京都知事の娘とくればお金やらナンやらには困らなかっであろうことなどなど。そして名言「其の国の代表する建築は住宅建築である」という言葉を教えてくれます。その、実験の極め付けがこの5つ目の完成系自宅「聴竹居」であり、その工夫をご覧いただきますとの話。熱のこもった話にいやおうなく期待が高まってました。
 

数々の工夫に感心

早速、披露していただいたのが、まず室内の風の秘密です。この涼しさの秘密は何かというと、淀川から上がってくる西風を室内に取り込んでいるとのこと。見るとさっき座っていた畳の段のあるところがスライドで開き、そこから外の風が入ってきています。外の土台に風穴を開けて、中に通しているとのことでした。いわゆる自然の換気扇です。さらに、天井には紙を5枚張り重ね、湿気を吸い取る工夫を試みています。
 
さらにパノラマで、山下が見下ろせる縁側に移動すると、ここでは天井に同じような穴が空いており、ここからも空気が降りてきています。この仕組みは室内のあちこちに発見できて感心できます。いや、本当に涼しいんです室内が。
 
続いて、説明は縁側のガラス付近に向けられます。このガラスの工夫がたいしたもので、
一見ただ左右に開くだけに見えるんですが、そうじゃありません。
 
夏は日差しを中に入れたくないし、冬は入れたいという矛盾した考えを実現するために、屋根の軒先の角度を見事に調節していますが、上部に刷りガラスを絶妙な場所に入れています。これは太陽の位置を測定して、すりガラスを入れて無粋な軒先を見えないようにして、見下ろす川のパノラマ感を演出しています。角度を計算しての、にくい演出です。
 
実際に座って確認しましたが、確かに軒先が見えない状態になって、目線は目前の風景だけが見えてきます。続いては、左右2枚の幅が違っており、これは風でガタガタ鳴るのを完全に防ぐ狙いがあります。滑らして閉めるその枠の下の部分においても、端っこの部分を僅かに高くしてあり、圧力を増やして、密閉感を高めるなど細かい工夫がなされています。
 
また、縁側の角には柱がなく、屋根の工夫によって(神社などで使う業らしいです)屋根の端を吊り上げるような造りになっており、その強度は阪神大震災でもびくともしなかったことで証明されたそうです。
 
続いて、客室です。客室では自作の机と椅子があり、ここでも工夫が見られます。着物を着た女性が座りやすいように座後ろを大きく開けてある椅子。そして、ここがすばらしかったのが、さっき座っていた畳に座っている人と、椅子に座った人と目線が合う位置に調整してあります。和と洋を目線でかみ合わせるという試みです。そういう藤井という人は目に見えないものをデザインし続けていました。
 
お子様用の作り付け机がかわいかったり、家族全員の顔が見えるようにしたリビング中心の設計で、現代の理想とする家の建築が既にここにあります。そうそう、言い忘れてましたが、この家、基本的にほぼ全面バリアフリーになっています。建てられたのが昭和3年というのが信じられなくなります。
 
一方、金持ちぶりも発揮。当時はほとんど誰も持ってなかったであろう巨大なスイス製の冷蔵庫が台所にあったりとか、配電盤の数からして、電気で文句を言われていたかもしれないとのことで、その辺に妥協なき金持ちぶりを発揮しています。
 
最初はちょっと古いおしゃれな家というイメージだけでしたが、計算された工夫の数々にいちいち驚かされます。工夫を積み重ねていって出来上がるものがここにあります。感動できます。
 
しかし、最も感動できるのは家族の姿がみえることです。見学が終わり15分ほど自由時間をもらったので、もういちど最初に座った畳から室内を見回していましたが、部屋部屋で生き生きとした人の姿が目に浮かんできました。そのことが一番心に残っています。
 
今回の見学は、ボランティアの人が次の時間の予約がないから、ということで、あまり見せない納戸などの説明してくれたり、こっちの質問に丁寧に答えてくれて、最後に記念撮影までしてもらって、お腹いっぱいの大満足の見学でした。一緒に行った年配の女性によれば、今回のボランティアの方は素晴らしかったわ!とのこと。2回目の見学だったそうです。冬には冬の秋には秋の顔があるそうなので、また来たいと思わせました。
 
そうそう、最後に一つだけ。風と湿気と戦って見事に勝利を収めた藤井厚二でも、蚊の対策だけは無理だったようです。川の側で林の中という場所で、蚊取り線香をものともしない蚊が大量にいます。ムヒなど塗ってで対策は万全にしていってください。
 

所在地 〒618-0071 京都府乙訓郡大山崎町大山崎谷田31
分類 観光スポット
見学予約 【水曜日】
見学希望日の3ヶ月前の1日(5月の見学の場合は2月1日)から
見学希望日の2週間前の水曜日まで。
【金曜日】
見学希望日の3ヶ月前の1日(5月の見学の場合は2月1日)から
見学希望日の2週間前の金曜日まで。
【日曜日】
見学希望日の3ヶ月前の1日(5月の見学の場合は2月1日)から
見学希望日の2週間前の日曜日まで。
※変更の場合がありますので必ず聴竹居ホームページ聴竹居|藤井厚二を確認ください。
予約方法 予約は先着順。メール(1928@chochikukyo.com)宛、もしくは聴竹居お問い合わせフォームに、見学したい日と時間(第1~第3希望記入)、見学者全員のご氏名、所属と、お申し込み代表者及び連絡担当者のご氏名、所属、住所・電話・FAX番号・メールアドレスを記入のうえ申込み。
※当ホームページにコメントいただいても予約はできません。必ずメールを1928@chochikukyo.comにお送りください。
見学時間 水曜日・金曜日・日曜日 9時~16時
【1】9時~ 【2】10時30分~ 【3】13時~ 【4】14時30分~
*お盆・年末年始は休み。(1回あたりの見学時間は概ね75分とします。)
人数制限 1回あたり原則15人まで(厳守)
見学資格 小学4年生以上。
18歳未満の学生・児童は先生もしくは保護者の付き添いが必要です。
小学3年生以下の室内見学はご遠慮ください。
料金等 1000円/大人 500円/学生・児童(小学4年生以上)
お問合せ先 TEL/FAX 075-956-0030 聴竹居事務局 田邊 均様 携帯:070-2323-1928
1928@chochikukyo.com
*電話でのご予約は、原則、お受けできませんのでご了承ください。
アクセス 電車:JR山崎駅、阪急大山崎駅からは、それぞれ徒歩約10分~15分程度です。
車:名神高速道路 「大山崎IC(※京滋バイパス「大山崎JCT」に併設)」より車で5分(町営駐車場に駐車。専用駐車場はありません。
ホームページ 聴竹居|藤井厚二
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備考 室内はもちろんのこと近辺における喫煙は禁止(=禁煙)。
・室内の写真・ビデオ撮影(携帯利用を含む)は禁止
・大型の荷物の持込みは禁止(手荷物は玄関に保管)。
・室内の家具等には手を触れない。
・禁止表示のある椅子・ベンチには腰掛けない
・見学範囲外への立ち入りは禁止。

聴竹居(ちょうちくきょ) への15件のコメント

  1. ピンバック: 藤井厚ニ(ふじい こうじ) | 山崎観光案内所

  2. ピンバック: 6月24日に天皇皇后両陛下が「聴竹居」にご来訪されます | 山崎観光案内所 

  3. 安藤 純彦 より:

    聴竹居の見学を申込み致します。
    見学希望日時:7月26日(金)11:00~
    人数:5名
    よろしくお願いいたします。

    • yamazakilove より:

      安藤様、当サイト管理人のYLです。

      申し訳ございません。当サイトは山崎に存在する観光施設やお店を紹介する個人のサイトになりまして、聴竹居を管理する団体ではございません。聴竹居見学の予約の申し込みは当サイトではできません。

      ご予約のお申し込みは聴竹居の管理ボランティア団体の窓口である【荻野和雄様 chouchikukyo@gmail.com】 までご連絡ください。お手数ですがよろしくお願いいたします。

      聴竹居の見学をご希望の方に

  4. 加藤 好乃 より:

    今日午前に電話で[講師と巡るハイグレードな大山崎探訪]を申し込みした加藤好乃です
    5月30日 2名で参加

  5. yamazakilove より:

    加藤 好乃様
    当サイト管理人のYLです。

    申し訳ございません。当サイトは山崎に存在する観光施設やお店を紹介する個人のサイトになりまして、聴竹居を管理する団体ではございません。聴竹居見学の予約の申し込みは当サイトではできません。

    ご予約のお申し込みは聴竹居の管理ボランティア団体の窓口である【荻野和雄様 chouchikukyo@gmail.com】 までご連絡ください。お手数ですがよろしくお願いいたします。

    聴竹居の見学をご希望の方に

  6. ふるやま より:

    教えてください。見学希望ですが、ボランティアの方の解説をお願いするのには、どうすればよいのでしょうか

    • yamazakilove より:

      こんにちは、ふるやま様

      管理人です。
      通常通りに見学をご予約いただきますと、当日は必ずボランティアの方が一緒に来てくださいます。その方に解説をお願いすれば大丈夫ですよ。

  7. 飯塚範子 より:

    こんにちは。聴竹居の見学の予約をお願いします。
    日時:5月27日(金曜日)11時
    宜しくお願いします。

  8. yamazakilove より:

    飯塚範子様
    当サイト管理人のYLです。

    申し訳ございません。当サイトは山崎に存在する観光施設やお店を紹介する個人のサイトになりまして、聴竹居を管理する団体ではございません。聴竹居見学の予約の申し込みは当サイトではできません。

    ご予約のお申し込みは聴竹居の管理ボランティア団体の窓口である【荻野和雄様 chouchikukyo@gmail.com】 までご連絡ください。お手数ですがよろしくお願いいたします。

    聴竹居の見学をご希望の方に

  9. 金澤 より:

    7月30日、何時でもかまいませんので 見学2人 予約お願いいたします。
    時間指定が必要なら 2時からでお願いいたします。

    • yamazakilove より:

      金澤様

      当サイト管理人のYLです。

      申し訳ございません。当サイトは山崎に存在する観光施設やお店を紹介する個人のサイトになりまして、聴竹居を管理する団体ではございません。聴竹居見学の予約の申し込みは当サイトではできません。

      ご予約のお申し込みは聴竹居の事務局である聴竹居お問い合わせからお申し込み下さい。
      お手数ですがよろしくお願いいたします。

      http://chochikukyo.com/contact/

  10. 木村 より:

    見学を申し込み致します。7月5日か9日か12日のいずれか1日、13時~を3名。宜しくお願いします。

    • yamazakilove より:

      木村様

      当サイト管理人です。

      申し訳ございません。当サイトは山崎に存在する観光施設やお店を紹介する個人のサイトになりまして、聴竹居を管理する団体ではございません。聴竹居見学の予約の申し込みは当サイトではできません。

      ご予約のお申し込みは聴竹居の事務局である、聴竹居お問い合わせからお申し込み下さい。
      お手数ですがよろしくお願いいたします。

      聴竹居お問い合わせ
      http://chochikukyo.com/contact/

  11. ピンバック: 2020三都物語 ④北浜、山崎、そして京都 | アンドロイドは黄金羊の夢を見るか

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